本日の喜びの日に伊沢勝平理事長先生、鎌田文恵学園長先生、鈴木繁雄前理事長先生はじめ、ご来賓の皆さんにご臨席賜り、令和8年度の入学式を挙行できますことは、この上もなき喜びとするところであります。
この冬は寒暖の差があり雪の被害も各地であり、厳しい冬でしたが、4月にはいり、光が温かく差し込み、風も柔らかく包み込み、春を感じるようになりました。
間もなく、冬の寒さにうずもれていた、あらゆる生命が躍動し皆さんの新しい、希望の1ページにふさわしい季節になってまいりました。ご入学おめでとうございます。
皆さんが私たちの仲間になりますことを、教職員、在校生とともに歓迎いたします。長い間皆さんをお育て下さっていますご家族と関係者の皆さんに心より祝福申し上げます。
聖和学園の歩みをごく簡単の紹介いたします。昭和4年に仏教精神に基づいた高等女学校の設立が計画され、吉田つぎ様から学校基金の篤志寄付がなされ、昭和5年に伊沢平左衛門様を設立者として吉田高等女学校が設立されました。その後、伊沢家のご尽力により、聖和学園は発展しました。昭和11年の財団法人吉田高等女学校となり、伊沢平馬様が初代理事長に就任されました。昭和23年に聖和学園と改称し、吉田高等学校と吉田中学校を併設しました。昭和26年に学校法人聖和学園が設立され、聖和学園短期大学が開学され、今年で75年目になります。
昭和29年に幼稚園を開園し、昭和61年に吉田高等学校を聖和学園高等学校に校名を替えました。短大の学科は時代の要請に応じ学科を設置してきましたが、現在はキャリア開発総合学科と保育学科の二学科となっています。
偶有性という言葉があります。偶然でもなく、必然でもないことです。ランダムと規則性が入り混じっている状態です。難しいですね。簡単に言うと、他でもあり得る、ということです。ジーパンを買いにいって、ブーツカットをかいましたが、ストレートでもあり得た、ということです。皆さんが進路先を決めるときいろいろと迷い、他にもあり得たが、聖和学園短期大学を選択したとおもいます。その選択が正しい選択となるためには皆さんと私たちの真剣な協働作用が必要です。もちろん、本学の先生方は熱意をもって、時間を惜しまず。皆さんの成長のために支援いたします。
絵画は空間芸術といわれ、音楽は時間芸術と言われています。皆さんの二年間は時間芸術だと思います。時間とともに成長します。自らを発見し、新しい自分を創ります。
皆さんが成長するために、まず、建学の精神があります。本学の建学の精神は仏教精神の慈悲、和、智慧という深い言葉です。それを少し軽くなりますが別の言葉を使ってみます。
慈悲は共感を含んでいると思います。共感は他者を思いやる、シンパシーです。さらに進んで他者の立場になるエンパシーです。このシンパシーとエンパシーが共感です。
アダムスミスは、見えざる手に導かれて繁栄と調和をもたらす、といっていますが、そのためには仲間意識と同感能力が必要であると著書の道徳感情論の中で述べています。同感能力はシンパシーですね。
カーツワイルは2045年にシンギュラリテイ、技術的特異点がくると予想しています。AI人工知能が人間の仕事の多くを奪い、社会が普通の状態でなくなり、予測困難になるということです。しかし、仕事や人間関係には共感能力が必要です。AIに人間の繊細な共感能力がそなわるのか、と今は疑問に思っていますが、それも私にとっては予測困難です。
次に和です。友情と結びつけます。皆さんは、今、1億2000万人の中の出会いです。この出会は貴重です。この出会いから生涯の友人も出来ると思います。友情は、まずミメーシス、模倣とか感染の意味です。友情は友人の良い性格、行動、習慣などが自然に模倣・感染します。それによって自分を成長させます。
間主観性という言葉があります。また、難しい言葉です。自分の考えも主観と友の考えも主観です、その主観と主観を調整します。そして、二人の主観を一つの考えにします。二人だけの客観になれると思います。その過程で柔軟な思考が身につくのです。
イギリスの社会学者のマイク・サヴィジは人間の社会的な活動を、経済資本、文化資本、社会関係資本と提示しています。社会関係資本はつきあいとか友情のことで、社会生活のための重要な要素と語っています。
友情と離れますが、ピエール・ブルヂュは身体的文化資本、それは、礼儀作法、言葉使い、マナーのことで、その大切さを述べています。
次に智慧です。これは学ぶ知識とこれを応用できる能力です。学んだ知識をグループワークにさらに地域社会の課題、日常生活などに応用します。この知識と応用が智慧に近いとおもいます。
ものの見方、考え方には三つあります。その一つは視点です、フオーカスです。二つ目は視野です。範囲です。コンテクストです。三つめが重要で見る角度です、視座です。メッソドです。一つの角度から見て、判断しないで、いろんな角度からみて判断すること、視座の輻輳です。この視座の輻輳が重要です。視座の輻輳は批判的思考力と結びつきます。批判的思考力は事実や情報をさまざまな角度からみて、客観的・論理的に思考することです。
外の世界は複雑な問題で溢れています。気候変動、環境悪化、生物多様性の破綻、終わらない戦争、不透明で予測困難なブーカ時代、新しい常識のニューノーマル、2030年まで解決の目標のSDGS、ネットでのフエイク・ニュース、中傷など、です。
それらの問題を判断するために、視座の輻輳ないし批判的思考力が必要です。慈悲、和、智慧、間主観性なども参加させて、客観的に判断できるようになって下さい。
これからキャンパスの二年間です。キャンパスは皆さんの空間です。学び、遊び、時には苦しみ、悩み、挫折もあります。その悩み、苦しみ、挫折が皆さんを優しく、強く、深く成長させるのです。青春の時間です。豊かなキャンパス生活を送ってください。
令和8年4月2日
学長 渡辺 信英








