二十四節季の啓蟄が過ぎたころから、急に日差しもやわらかくなったように感じられるこの頃です。この陽気に誘われるかのように、雪解けの地面から小さな生き物たちが今にも顔を覗かせてきそうです。
このような時節の中、先日10日に第56回卒園式を行いました。あいにくの空模様ではありましたが、園を巣立っていく92名の年長児たちの凛とした姿は、頼もしいばかりでした。
これからの小学校生活での新たなステージでも、ひとりひとり思いっきり歩み続けてほしいと念じております。
卒園式の4日前、年中児の子どもたちがこれまで何かにつけお世話になった年長児への感謝の思いを込めて、「お別れお店屋ごっこ」を行いました。その日まで、こつこつと作り上げてきた自慢の品を所狭しと陳列し、大きな声で呼び込んでいました。
商品のほんの一例ですが、仮面ライダーのお面、団子、ソフトクリーム、プリン、焼き芋、ペンダント、指輪、アクセサリーなどなど、数えきれないほどでした。
お客となって買う側の年長児は目移りするばかりです。ずいぶん悩みながらチケットを支払っていました。中には「えいっ」と、思いっきりよく買い込む姿も見られ、ひとりひとりの持ち味がが見られた一場面でした。
また、年少児が中心となって作った飾りで高級レストランに変身したホールでは、「ランチ会」も行われました。この日は特別メニューの豪華版?だけあって、おなかも心も思い出と感謝でいっぱいに満たされていました。
日の出が6時代になり、日中がより長くなってきたことを実感します。空気も温かくなり、気温という数字的な温かさだけでなく、体も心も温かく軽くなったような感がします。やはり太陽の力は素晴らしいなと思わされます。そして、この時期になるといつも思い出すは、中学校時代のS君のことです。
S君とは中学校の3年間、同じクラスでした。しかも、いつも隣の席でした。もちろんグループはいつも一緒でしたから、修学旅行などでは枕を並べて寝たものです。実は、彼は軽度の知的発達遅滞が見られ、学習面ではかなり苦労していたのです。でも、とても友達や生き物を大事にする人でしたから、学級や学年の人たちは皆彼のことが大好きでした。
彼は、中学校卒業後すぐに就職しました。その年の8月のある日、ひょっこり私の家を訪ねてきたのです。手にはショートケーキが入っている箱を持っていました。私の誕生日を覚えていて、給料の一部をさいてわざわざ買ってきてくれたのです。おそらく走ってやってきたのだと思います。箱の中の2個のイチゴショートは形が崩れていました。箱にへばりついたクリームを指ですくいながら食べた時の彼の屈託のない笑顔は、50年近く経った今でも忘れられません。まさに、人の心まで温かくしてくれるイソップ物語の「北風と太陽」の、太陽のような人だと思いました。私もS君のようになれればなあと思ってきましたが、なかなかかないそうにありません。
その後間もなく、S君は転居していたことが分かりました。それ以降は音信不通となってしまい、今に至っています。温かくなり始めるこのころになると、決まって彼のことを思い出します。









